木柵の朝番
北谷の柵を見回る番は、一晩につき四人必要だった。若者だけでは交代が足りず、羊飼いの祖母まで杖をついて出てきた。シオンは数を聞いて腕まくりしたが、村長は彼へ見張りの仕事を任せなかった。見知らぬ旅人より村の子供の方が羊の癖を知っている。代わりに傷んだ防寒布の修理を依頼した。
朝番を終えた羊飼いの青年オランは、足を洗う暇もなく乳を搾った。小型魔獣は羊を襲うより干し草を荒らす。だが餌が減れば弱い母羊から痩せる。村の女たちは干し草を屋根裏へ移し、幼い者から温かい乳を飲ませた。魔除けの修理と関係なく、畜舎を改める必要があった。
シオンは柵の外で奇妙な木杭を見つけた。先端に灰色の粉が付着し、近づいた岩鼠が方向を変える。村の若者が山仕事で拾った鉱石を使ったという。リスベルは粉を指先で確かめ、術の余波を受けやすい石だと説明した。谷の問題は風見鶏一つの故障ではないらしい。
オランは畜舎の戸口へ、夜ごとの見回り時刻を書いた板を掛けた。誰かが寝坊すれば責めるためではなく、羊を数えた時刻を残すためだ。昨夜だけ見失った一頭は隣家の庭に入り、野菜の苗を食べていた。村長はその弁償も忘れず、羊飼いの収入から少しずつ払うことにした。
村長は木杭を抜くよう命じた。魔獣を避けさせても別の村に押しつけるなら、谷全体の争いになる。若者は不服そうだったが、隣村から嫁を迎えた兄の顔を見て従った。シオンは命令した老人に敬意を抱くより先に、恐れを引き受けて決める者の疲れを見た。
昼過ぎ、子羊が一頭生まれた。母羊は落ち着かず、畜舎の戸へ頭を押しつける。オランは濡れた藁を入れ替え、子羊を乾いた布で包んだ。シオンが縫った布はそこで使われた。飾りも印もない仕事だったが、小さな体の震えが止まるのを彼は確かに見届けた。




