陶工の名誉
偽の保証人にされた陶工は、南の丘から町へ来た。名はロフェン。父の代から土器を焼き、借金を嫌って前金でしか注文を受けない職人だった。書記に呼ばれて証言した帰り、彼は市場で自分が借金を保証したという噂を聞きつけた。
ロフェンは怒って叫ばなかった。注文をキャンセルした客の名を紙へ書き、証言録の写しを配り歩いた。町内で仕事を得るには評判が必要で、虚偽を正す時間も経費になる。シオンは車に積んだ壺の梱包布を直しながら、陶工の慎重さを見ていた。
一方、貸主の弟が逃げ込んだという宿の主人は、職人の証言より客の金を重んじた。役人に部屋を調べさせず、宿帳の写しも出さない。シオンは夜に訪ね、黒花の印を戸口へ押せば主人が慌てるかと考えた。しかし宿には病人と旅の母子が滞在している。恐怖を撒くなら巻き込む相手を選べない。
ロフェンが配った証言録の写しは、雨で滲まぬよう油紙に包まれていた。受け取った客の中には、謝る者も黙って去る者もいる。彼は相手によって追いかけることをせず、次の注文を焼くため丘へ戻った。シオンは壺の梱包代を通常どおり請求した。
ロフェンは宿の前で人を集めず、翌朝、宿泊規則違反を理由に町会へ営業監査を申し立てた。宿の主人は役所から聞かれて初めて、逃亡者と知りながら泊めたことを認めた。男はすでに裏門から去っていたが、乗った馬車の行先は分かった。
帰り道、シオンは壺の一つを手に取った。目立たない薄い釉薬に、光を当てると青い粒が浮かぶ。陶工は「見せたいやつだけ見ればいい」と言った。シオンはその言葉を気に入らなかった。自分は見たくない者にも、いつか黒い花を見せつけたいのだから。




