三人の保証人
夜間学舎で騒いだ男は、翌日の審問に出頭しなかった。法務書記は債権者の名を調べる一方、学校を欠席した少年の家を訪ねた。少年の母はこれ以上近所に迷惑をかけられないと扉を閉めた。家族の名を使った圧力が、効き始めていた。
シオンは男の居場所を探そうとして、ネラに相談した。彼女は貸付契約を読み、保証人の欄に同じ筆跡で三つの名前があると見抜いた。「同意していない人まで縛るつもりだね」。保証人の一人は町外の陶工で、もう一人は五年前に亡くなった魚屋だった。
シオンは夜、債権者の倉庫へ足を運んだ。窓から帳場の灯が漏れ、紙束が積まれている。忍び込めば証拠を取れるかもしれない。だが前に証拠を盗み、返金を止めた代償が足首の痛みとともに蘇った。彼は戸口を叩き、債権者に表へ出るよう告げた。
法務書記は保証人の欄を一つずつ封じた。偽署名が消えたからといって本物の債権も消えるわけではない。債務者の父には残額が通知され、返済方法の相談日が設けられた。シオンは不正を暴く快感を覚えながら、その後始末がどれほど地味かを見続けた。
現れたのは年配の女で、弟が契約を任されていたと知ると顔色を変えた。彼女は虚偽の保証人について聞かされていないという。シオンは信じなかったが、女がその場で帳簿を封じ、役所へ持ち込むと決めたのを見た。弟は逃げた。女には店を守る理由があり、だからこそ弟の行為を止める必要があった。
三日後、夜間学舎へ少年が戻った。授業の途中で文字を間違え、講師に直してもらう。シオンは修理代の受領書を受け取り、教室の外へ出た。人を脅す言葉の鋭さより、紙の上に残る偽署名の方が長く人を縛る。いつか自分の黒い花にも、同じほど確かな意味が要る。




