外套を預かる店
拘禁の期間が終わる頃、ミラの工房にシオンの外套を預かるよう役所から連絡が入った。保管庫が狭く、持ち主の知り合いに渡すことになったという。ミラは断るつもりだったが、箱を開けると古い縫い目が目に入った。弟子が最初に作り、何度も裾を詰めた黒い外套だった。
彼女は布を広げ、傷みの激しい裏地だけ直した。代金は後で請求すると決め、領収書を箱へ入れた。許したわけではない。寒い時期に外套なしで歩かせるのは、職人として気に入らなかっただけだ。
工房の若い弟子が、あの人は戻ってくるのかと尋ねた。ミラは首を振った。「戻る場所と、会える場所は違う」。彼女は店の鍵を替えたままにし、仕事の記録も変えなかった。
拘禁中のシオンは、手を動かす仕事を願い出て、古い軍服のほつれを直していた。制服の布地は頑丈だが、袖口の糸はよく切れる。誰が着るか知らぬ服を、毎日同じように縫い直す。見せるための姿を考える余裕はなかった。
工房の弟子たちは古い布で針を試し、腕を上げていた。シオンが去った穴を誰か一人が埋めたのではない。仕事の分担を変え、注文の締切を調整し、ミラ自身も夜まで机に向かった。外套の裏地に使った布は、もともと仕入れ過ぎた品だった。彼女は帳簿に材料費と手間賃を書き込み、世話をしたことを隠さなかった。感情と請求は、別々に残しておけるのだ。
釈放の朝、外套の箱が戻ってきた。シオンは裏地の新しい縫い目に触れ、ミラの手仕事だと気づいた。礼に行く勇気はなかった。箱に入った請求書を見て、いつかきちんと金を払おうと決めた。封筒には工房の住所と、以前と変わらぬ筆跡があった。




