選ばなかった免罪
シオンは受領記録をリュシアへ渡した。面会を求めると、彼女は役所の狭い会議室を指定し、衛兵ヨエルを同席させた。机の上には空の記録箱がある。誰も彼を怒鳴らず、書類を受け取るまで待った。
「私が盗んだ」。シオンは理由を尋ねられ、誰かの陰謀を暴くためではなく、自分がどれだけ人を動かせるか試したかったと答えた。リュシアの表情は変わらなかった。ただ筆を止め、もう一度同じことを言わせた。
彼は逮捕された。捜査妨害と窃盗の疑いで、身柄を詰所へ移される。外では北から来た隊商の鈴が鳴っていた。ヨエルは彼の手首に縄を掛けたが、無用に締めつけなかった。シオンは自分を勇敢だと思わなかった。返したのは証拠だけで、奪った時間は返せない。
裁判までの間、彼の修繕仕事は止まった。空き家の家主は契約の解除を検討し、依頼客は別の職人を探した。ミラは知らせを聞いても見舞いに来なかった。工房は繁忙期で、弟子の一人が病で休んでいたからだ。
拘置の手続きでは持ち物が一つずつ数えられた。小さな針箱も、黒い花の印も、帳簿の切れ端も取り上げられる。ヨエルは品名を読み上げ、シオンに確認させた。外套を預ける際、彼は襟の縫い目だけ気にした。牢へ入る門は大げさな鉄門ではなく、使い込まれた木の扉だった。誰の前にも静かに開き、静かに閉じた。自分がずっと求めた劇的な光景はどこにもない。
牢の狭い窓から町の鐘が聞こえる。シオンは黒い花の印を持ち込めなかった。自分が望んだ悪の姿とは遠いが、やったことの名はここで初めて曖昧ではなくなった。門の外を荷車が二台、鈴を鳴らして通り過ぎた。




