遅れて届く支払い
橋の修理に関わる職人たちは、町会からの賃金を半月遅れで受け取った。補填に使われたのは、来春の公園整備費だった。石工組合長は不満を述べつつ受領書に署名し、若い職人たちはようやく家へ食料を持ち帰った。原因の一部が匿名の脅しにあったとは知らない者も多い。
シオンは町会議長が支払いを工面したと聞いた。相手は腐敗の象徴に見えたが、責任を果たす力も持っている。その二つは矛盾しない。人は一つの顔では測れない。それを理解するほど、誰を裁けば悪の格が高まるのか分からなくなった。
水路沿いの家には、旅商人から幌の修繕依頼が増えていた。シオンは仕事を選び、賃金の低いものを断るようになる。かつては頼まれたものを全部受けていたが、いまは断ることにも意味があると考えた。客の一人は別の修繕屋へ行き、誰も彼を恨まなかった。
夕方、ネラが古い帳簿を届けた。シオンが工房を出る前に書きかけたものだ。彼女は扉の外に立ち、話を長引かせなかった。「自分で選んだことの勘定は、自分でして」。シオンは帳簿を受け取った。
遅れて賃金を受け取った石工の妻は、借りた小麦粉を隣家へ返した。代金より先に返す約束があったからだ。家々の間には帳簿へ載らない信用もある。金を取り戻しても、待ってもらった数週間は消えない。シオンが工房を辞めたあとも、町にはそうした細い約束が幾つも張り巡らされていた。彼が踏みつけたのは議長の体面ばかりではなかった。
夜、彼は自分が引き起こした損失を数えてみた。数行で済ませられると思ったが、紙はすぐいっぱいになった。どれも小さい。けれど重なれば、人の冬を少しずつ冷たくする。悪を美しいと呼びたいなら、まずこの汚れを見失わないことだ。




