赤い手袋の注文
水路沿いの空き家へ、赤い革手袋の修理を頼む女が来た。名はカルナ。北辺で荷を護衛する傭兵で、凍傷を防ぐ厚手の手袋を長く使っている。指先を縫い直してほしいだけだという。シオンは代金を受け取り、彼女の剣の傷を目で追った。
カルナは衛兵でも騎士でもない。契約のある荷だけを守り、助けるかどうかは報酬と危険を量って決める。シオンが悪の格について話すと、彼女は興味のない顔で火に手をかざした。「悪党も依頼主も、支払いを遅らせる者は嫌いだ」。それが彼女の仕事の境界だった。
手袋の仕上がりを確かめたカルナは、街道の小さな護送仕事を紹介した。幌の修繕と荷札の付け替えを兼ねた短い旅だ。シオンは町から少し離れてみたくなり、仕事を引き受けた。
旅の途中、凍った林道で馬が足を滑らせた。カルナは荷車の重さを分散させ、御者へ縄を渡す。シオンも指示を受けて必死に支えた。どちらが偉いわけでもなく、それぞれができることをしてようやく馬が立った。
カルナの護衛団は四人で、仕事によって人数を増減させていた。剣が強い者だけでなく、馬の病を見分ける者や道の水場を知る者も欠かせない。休憩中、彼女はシオンに荷車の重心の取り方を教えた。「戦う前に倒れたら、誰も褒めないよ」。彼はその言葉を笑えなかった。見映えのよい立ち姿だけを考えていた頃から、確かに少し遠くへ来た。
宿駅へ着くと、カルナは約束の賃金を払った。「次は手袋を新しく作ってくれ」。シオンは仕事を請けた。強者の威圧ではなく、信頼できる技術によって次の扉が開く。それが気に入らず、しかし役に立つとも認めた。




