石工組合の議場
石切場の親方たちは、冬の仕事を減らすかどうかで割れていた。橋の修理に石を回せば、町の住宅用の注文が遅れる。住宅用を優先すれば、春の増水までに橋が完成しない。組合長は投票を提案したが、若い職人たちは賃金の減少を恐れ、会議へ出たがらなかった。
シオンは議場の外で話を聞き、どちらかの陣営へ金を渡せば争いを大きくできると考えた。ラウルに相談すると、仲介人は票を買う相場を教える代わりに、投票権のある職人の数を聞いてきた。金を出すだけでは結果を制御できない。互いがそう理解していることに、奇妙な緊張が生まれた。
やがて組合長は議場を開放し、職人の家族にも発言を許した。家族の一人は未完成の橋を毎日渡る荷車を心配し、別の者は凍える家の壁を直したいと訴えた。討論は長引き、誰も簡単に譲らなかった。
シオンは金を渡す相手を決めかね、結局何もしなかった。投票では橋の修理を優先し、住宅用には別の採石場から材を買う案が通った。支出は増えたが、家々の工期は大きく遅れずに済む。
投票の前夜、若い石工二人が橋の完成予定を巡って口論した。一人は家を新築したばかりで、もう一人は父が川の増水で荷車を失っている。仕事は同じでも、守りたいものが違う。組合長はそれぞれの事情を台帳の欄外へ書き添えた。多数決で決まる数字の背後に、負けた側の生活も残るようにするためだ。シオンは金で票を買おうとした自分の考えが、あまりに薄いことを知った。
自分の介入がなくても人々が難しい決定を下す。それを見て、シオンは満足するどころか悔しくなった。人間が自ら立ち上がれるなら、なおさらその判断を揺るがす悪が必要だと信じたのだ。




