夜警の縄張り
黒花の目撃が増え、町会は夜警の巡回範囲を広げた。住宅街を回す人員が足りなくなり、職人組合から臨時の見回り人が出される。シオンは新しい巡回表を盗み見て、警備の薄い穀物倉庫へ入れると知った。しかし同じ晩、南区では家畜泥棒が続けて捕まらずにいた。
シオンは倉庫へ向かう途中、囲いを破る二人組を見た。盗人は鶏を袋へ詰め、闇へ消える。彼は追いかけようとしたが、今夜の目的が遅れると気づき、その場で足を止めた。自分が警備を動かしたせいで、別の者が隙を見つけた。だからといって全ての罪を背負えるわけではない。
翌朝、家畜を失った家では、売る予定の卵がなくなった。バルトは町会へ臨時の配置変更を提案し、ヨエルは巡回の順番を自分で書き直した。町全体の安全は、一人の黒衣の男に合わせて回るべきではない。
シオンは仕立て工房で指を動かしながら、計画を変えた。警備の薄さにつけ込むだけなら、あの金髪の偽王と何が違う。自分が公然と挑めるだけの仕組みを壊す方が、ずっと重い代価を払わせられる。
盗まれた鶏の持ち主は、翌日には残った卵を親戚の家へ預けた。いつまでも嘆いていれば、それさえ失いかねないからだ。子供たちは囲いの壊れた箇所を石で埋め、父親は番犬を借りに行った。犯罪は被害者を一生その場へ縛りつけるとは限らない。シオンが悪の名を欲しがる間にも、人々は失ったものの周りに新しい生活を作っていく。
夕刻、彼は町会の公開規則を読み直した。弱い者の寝床を荒らすのではなく、命令を下す者たちの自信を奪う。その考えは彼を以前より危険な方へ連れていったが、本人はまだ、それを成長だと信じていた。




