若い衛兵の報告
バルトの部下に、新任の衛兵ヨエルがいた。二十二歳で、故郷の村では農作業のほかに仕事がなかったという。彼は黒花の印が描かれた木版の目撃情報をまとめ、町会へ提出した。悪戯の印と放火の前兆と商会への脅迫が、同じ人物の仕業である可能性を指摘したのだ。
報告書は大げさではなかった。証言の食い違いも、確証のない場所も丁寧に残してある。バルトは若者の慎重さを評価し、勝手な逮捕をしないよう命じた。商会主は犯人をすぐ捕まえろと詰め寄ったが、衛兵側には証拠が足りない。
シオンは掲示板に貼られた捜査協力の紙を読んだ。そこには自分の外套の特徴がかなり正確に書かれている。町の誰かが見ていたのだ。彼は怒りより先に興味を覚えた。顔を知らない衛兵が、足跡と送り状だけで自分を追っている。
夜、シオンはヨエルの帰り道に立った。襲うためではない。相手がどんな男か見るためだった。ヨエルは市場で母親に似た老女の荷を運び、それから詰所へ帰る。歩き方は平凡で、剣の柄を握りしめることもない。
ヨエルは紙の束を結ぶ紐の色まで揃えていた。書類が積み重なる詰所では、急いで取り出せることが大事だからだ。先輩は若者の几帳面さを笑ったが、記録を探す段になると誰もが助けられた。シオンは彼の報告を読んでいない。ただ紙の上に見知らぬ自分の輪郭が出来上がりつつあることを、何となく感じていた。
シオンは影から離れた。捜査報告には、彼が追われる理由がある。悪の名を手に入れたいなら、それを追う者の誠実さに目を閉じてはならない。相手の仕事が細かいほど、こちらも粗い手を使えなくなる。




