硝子に映らぬ花
冬至を前に、町の礼拝堂には灯を寄付する人々が集まった。戦死者を悼む家、旅の無事を願う商人、病の快復を祈る老人。それぞれが違う理由で硝子の灯籠を吊るしていた。シオンはその窓に黒い花の影を映せば、忘れがたい光景になると考えた。
だが礼拝堂を訪ねると、管理人の老司祭が静かに戸を閉めるところだった。「何をしに来た」。シオンは言い淀み、灯を見るだけだと答えた。司祭は開けたままの小窓を指した。中には、夜通し祈る人のための椅子が並んでいる。
外ではトアが父の名を書いた小さな札を結んでいた。父は生きている。だからこそ来年も一緒にいられるよう願うという。シオンは影を映す道具を外套の下に隠した。ここで人を恐れさせれば、彼らの祈りが自分の道具になる。それは粗雑だと思った。
しかし彼は、自分が礼拝堂を守る善人だから退いたとは考えなかった。悪にも選ぶ場所がある。その選択が美学なら、他の場所では一切手を緩めない覚悟が要る。そう思いながら街灯の外へ歩いた。
司祭は灯籠の下へ小さな木札を置き、最後に来た人が帰れるよう扉を開けていた。信仰の薄い旅人も、ただ暖を取る者も追い返さない。それが礼拝堂の決まりだった。シオンは司祭を弱い人間だとは思わなかった。守るべき人が増えるほど、ある種の強さは派手な形を失う。自分が目指すものは、そうした静けさに背を向けなければならないのだろうか。
夜半、礼拝堂の窓は無数の灯で温かく光った。黒い花の影はどこにもない。代わりにシオンは、密かに商会の倉庫を監視する目を増やしていた。冬の蓄えを握る者との争いは、まだ終わっていなかった。




