灰雪の知らせ
北から戻った隊商の車輪には、灰色の雪がこびりついていた。峠で火山灰が降り、積雪の上に重なったという。ルーヴェルの町会は旅人の話を聞き、屋根の掃除道具と水樽の点検を始めた。灰が流れ込めば染物の水も使えなくなる。工房主ミラは弟子たちに桶へ蓋をするよう命じた。
シオンはようやくラウルへの支払いを終えた。銀貨の最後の一枚を置くと、仲介人は領収書を渡す。礼も脅しもない。長いあいだ自分の手を縛った借金が消えたというのに、町では灰への備えの方が大切だった。
町の噴水広場には、灰の厚さを測る木板が設置された。トアが板を立て、衛兵バルトが位置を記録する。シオンはその手際を眺めながら、以前のように人が集まるだけでは興奮しない自分に気づいた。人の生活に重くのしかかるものは、派手な言葉など待たずに現れる。
一方、南の穀物商会は灰が南へ飛ぶという噂を使い、麦の値を上げ始めていた。実際の飛散域はまだ不明だ。市場のパン屋が買い控えると、値はさらに上がる。ネラは仕入れ札を集め、仕入れ値と売値の差を書き出した。
灰の知らせを運んだ隊商は、港の調査官に採取した雪を渡した。泥の割合と風向きを調べ、農地への影響を確かめてもらうためだ。数日かかるという返事に、オルフは苛立ちながらも待つことを選んだ。不確かな災害に備える仕事は、見栄や名声とは関係がない。誰かが確かめている間にも町の人々は買い物をし、祈り、働き、冬をやり過ごしていた。
シオンはその帳面を見て、初めて自分から一つの利益を考えた。恐怖を与えるだけでなく、他人が恐怖によって動く先に立つこと。彼は誰にも相談せず、値を上げている商会の名を書き留めた。




