↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪の美学――染物師の弟子は、最高のヴィランを目指す  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
220/228

針金の輪

青墨の男は、荷物を受け取る時だけ指に細い針金の輪を巻いていた。合図なのか傷を隠すためなのか、シオンには分からない。市場で声を掛けると、男は知らないふりをして果物屋へ入った。黒衣の青年を恐れるような素振りは見せない。

シオンは後ろから腕を掴み、輪を見せろと迫った。男は叫び、周囲の店主が二人を引き離した。広場の目はすぐシオンへ向かう。人の名で恐怖を売りたい男が、知らない相手に暴力を振るおうとする姿だけが見えていた。

果物屋の主人は乱暴な声を嫌い、二人へ水を差し出した。リェスは怒りで手が震え、針金の輪を外そうとして落とした。拾った少年はそれを古い銀貨だと思い、母親へ見せる。主人は危ないから返しなさいと注意した。小さな輪一つで、こんなに大人が言い争うのが信じられないらしい。

シオンが謝りそびれている間に、店の客たちは別の屋台へ流れた。果物屋は品を抱え直し、傷んだ実を分ける。午後の商いを取り戻すには、二人の事情がどうであれ働かねばならない。リェスは腕を押さえながら仕事へ戻り、シオンは石畳に残った水の染みを踏まぬよう歩いた。正しさを確かめる前に手を出したことが、これほど安っぽく感じられるとは思わなかった。

男はリェスと名乗り、運送屋の手伝いだと説明した。針金は壊れた指輪の代わりで、仕事で箱を数える時の目印だという。本当かどうかは分からない。シオンは手を離したものの、謝る言葉を口へ出せなかった。

その夜、リェスの雇い主が詰所へ訴えを出した。シオンが無関係の人間を脅し、仕事を妨げたという。バルトは双方を呼び、事情を聞くことにした。悪人を見つけたいという欲望は、一度相手を間違えればただの暴力になる。シオンには、その可能性を知らぬとは言えなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。