二枚の伝票
荒物屋のダルンが提出した伝票には、同じ番号が二度使われていた。一枚は倉へ納めた縄の代金、もう一枚は集会所近くへ運んだ小麦袋の代金である。数字が重なる理由を問われ、ダルンは帳付けの誤りだと言った。バルトは職人へ荷の数量を確かめるよう頼んだ。
書記エダは、誤記だけなら罪にはならないと説明した。しかしその数字を利用して品物を受け取った者がいるなら、別の問題が生まれる。関係する職人は他にもおり、帳簿の一行から誰かを犯人と決めつけるのは危険だった。
帳面に使われていた紙は、港務所が売っている一般用のものだった。これなら誰でも買えるため、紙質だけで書いた者を追えない。書記は墨の濃淡を比べ、同じ日に書かれたかどうか調べる。シオンには数字より、欄外に描かれた小さな矢印が気になった。誰かが荷を移した場所を示す印にも見える。彼は書記へ問いかけようとして、無関係の者が記録を勝手に見ていると知れれば追い出されると思い直した。
ハダは倉の鍵を数え、夜番の名を確認した。誰かの誤りを探している間も、別の荷が到着する。細い運河を舟が渡り、濡れた麻袋が倉へ運ばれた。帳面の謎はその場では解けず、翌日の仕事だけが増えていった。
シオンは裏道の店で、若い使いが別の男へ合図を送るのを見た。ダルンの雇い人とは違う顔で、指に青い墨がついている。その男は六枚花弁の札を胸元へしまい、誰かを待つように橋の陰へ消えた。
追いかけたシオンは足音を消そうとしたが、靴底が砂利を鳴らした。相手は振り向きもせず、狭い通りを抜けてしまう。捕まえることより先に、自分が何を見たか覚えておく必要があった。店先では、いつものように客が米と塩を買い、商いは続いていた。




