灯の間の道
集会所の夜番が増えたことで、町の他の巡回路は手薄になった。バルトは商会へ協力を求め、仕事帰りの職人たちが交代で見回りを手伝うことにした。シオンにも革の腕章を直す依頼が来たが、衛兵の信用を借りて夜を歩く気にはなれず、作業だけ引き受けた。
夜道では、子供を迎えに来た母親が同じ道を二人で歩くようになった。書記は灯を一つ追加するため予算を調べ、リスベルは術灯を移すより油灯を増やす方が早いと答えた。恐怖への備えは、小さな生活の工夫から始まる。
油灯を増やす案には反対もあった。風の強い道では火が消えやすく、保管する油も必要になる。灯守の老人は今ある灯を磨き直し、夜に汚れた硝子を交換するだけでも明るくなると説明した。町会は新しい灯を二基だけ買い、残りは整備で補うと決める。
見回りを手伝う大人たちは、家に戻れば畑や商売が待っている。全員が毎晩出られるわけではない。バルトは当番表を作り直し、病人のいる家や夜勤明けの者を外した。帳面には細かい訂正が増え、誰かの名前を抜くたび別の人へ頼む必要があった。シオンの印を恐れた町が守ろうとしていたのは、大義ではなく、こうした日々の均衡だった。
シオンは通りの向こうで、六枚花弁の札を貼った者らしい影を見つけた。追えば捕まえられるかもしれない。しかし影は店の陰へ入り、そこから別の若者が荷箱を抱えて出てきた。誰が誰なのか暗闇では分からない。
彼は無闇に追わず、腕章を届けに来た職人へ場所を伝えた。自分の怒りで夜道を騒がせるより、見張りの人々が自分のやり方で確かめる方が確実だ。そう判断した自分を、シオンは少しも英雄らしいと思わなかった。ただ、悪を名乗る者にも見誤ってはならない顔があるのだと知った。




