小麦袋の印
六枚花弁の札に使われた染料は、港の安い荷札用墨と同じ種類だった。店で誰でも買えるので、それだけでは手掛かりにならない。若い衛兵は荷役人の仕事場をすべて探すべきだと主張したが、バルトは一人ひとりの暮らしを乱すだけの根拠がないと退けた。
一方、北門の倉には先週届いた小麦袋が積まれていた。袋の縫い目には六本の青糸が混ざり、集会所の窓で見つかった布屑に似ている。倉庫番は犯人を断じず、どの職人が縫った袋か調べることにした。袋は以前、ダルンの荒物屋へも卸されていた。
小麦袋を縫った職人は、糸の色で納品先を分けていた。六本の青糸は港向けの合図だが、同じ色を使う別の工房もある。倉庫番はその説明を記録し、袋の継ぎ目に残った小さな結び目の向きを調べた。昔から働く職人ほど、その癖を覚えているという。
一人の若者が名乗り出て、自分が縫った袋かもしれないと話した。だが彼は集会所の場所を知らず、最近は足を痛めて家から出ていない。バルトは無理に連れ出さず、必要なら役所の人間が家へ行くと告げた。疑いを受ける者にも働く日と休む日がある。シオンは彼の顔を見て、犯人を探したい心が人の暮らしを縮める危うさを思った。
シオンは縫い目を見て、同業者の技術が犯行の痕を残していると知る。自分も天幕を裂く場所を選んだため、技術を持つ者にはいずれ分かるだろう。他人の悪を暴く手順は、そのまま自分へ向かってくる。
夜、倉の帳場で年配の荷役人が言った。「袋は食い物を入れるために縫う。人を脅すためじゃない」。シオンは返事をしなかった。使い方は持ち主が決める。そこに美しさが宿るかどうかも、誰かが決めてくれるわけではない。




