錆びた刃の店
古道具屋には、古い騎士の短剣が売られていた。錆びた鞘の外側に小さな徽章が付いている。シオンは手に取ったが、刃はひどく欠け、飾りにしかならない。店主は北辺の退役兵が売りに来たものだと説明した。持ち主の名を聞いても、覚えていないという。
隣では若い客が剣を振るう真似をしていた。友人はそれを見て笑い、刃を持つならまず足元を見ろと忠告する。店主は壁に掛けた細工道具を下ろし、武器の扱い方を知らぬ者には売れないと断った。
店主は刃の重さを確かめさせた。鍔の下には小さな刻字があり、かつて武器を管理した工房の印らしい。持ち主の名は消えていた。シオンは研ぎ石を借り、刃を少し磨いた。店主はやり過ぎれば欠けが広がると注意した。
店には古い鎧の留め具もあり、少女が祭礼衣装の飾りに使おうと選んでいた。彼女は武器の来歴に興味がなく、模様の綺麗な金具が欲しいだけだという。同じ品でも求める意味は違う。シオンは柄の革が割れていることに気づき、余った革で巻き直すことにした。値引きを頼むより、もう一度使える状態へ直したかった。
戻る途中、刃物を持つことを知られぬよう鞘を包み、鍛冶屋の前で足を止めた。砥石を借りる代わりに翌日の荷袋を縫う約束をし、握り具合だけ確かめてもらった。刃はまだ、人へ向けられていない。
シオンは短剣を買った。強い相手と戦うためではない。自分が切った天幕と、ただ恐れを見せたかった小さな刃を忘れないためだ。短剣の欠けた場所には、かつて何かにぶつかった痕がある。人を守るためか奪うためかは分からない。
仕事場へ持ち帰ると、シオンは錆を落とし、革の鞘を作った。刃が抜けないよう安全な留め具を付ける。誰かを脅す道具を整える時間と、誰かを傷つけぬよう整える時間が、同じ手つきで流れていった。




