庭師の暖炉
港の天幕が切られた翌日、会場の庭を手入れしていた老人は、風で散った花を拾っていた。人が帰った後も小石を踏み荒らされた小径は残り、植え込みの枝が折れている。老人は宴に招かれなかったが、明日の朝には普段どおり庭を使えるようにしなければならない。
町会の調査員は昨夜の足跡を探しに来た。老人は、客が皆立ち上がった後では誰の靴跡か分からないと答える。ただ、壁際の灰壺が倒れる前、誰かが幕の縁を触っていた気がするという。彼は顔までは覚えていない。夜の灯に紛れた手袋の色だけが記憶に残った。
庭の入口では、昨夜使われた木札を外す作業も行われていた。大人の胸ほどの高さに刺さった案内札は、客が迷わないよう道筋を矢で示している。老人はまだ読めぬ字もあるので、木札の色と向きで覚えていたという。宴の日だけは子供が来るため、躓くような石を前もって拾っていた。ところが裂け目の騒ぎで皆が外へ飛び出し、積み直した石がまた散った。
老人は庭師見習いの少女へ、傷んだ小径を全部一日で直さなくてよいと教えた。まず人が通る道だけ平らにし、花壇は雨が止んでから戻す。彼は残った枯葉を小箒で集め、暖炉の灰を土へ混ぜる量まで量った。シオンは自分の刃で動かした人々の足跡を、老人が黙々と消す姿を見ていた。
シオンは修繕に使う木枠を届け、庭の隅で話を聞いた。老人は黒い布片を見て眉をひそめたが、恐怖より先に、花壇を踏まれたことに腹を立てていた。彼は暖炉で手を温め、折れた枝を短く切る。器用な手が枝を揃えるたび、シオンのつけた傷は一つずつ処理されていく。
調査員は記録の写しを持ち帰り、老人は刈り込んだ葉を堆肥へ運んだ。シオンにはまだ、最初の一歩で刃を入れる時の緊張が残っていた。けれどその緊張は他人には伝わらず、庭の仕事は彼がいなくても終わってしまう。




