明け方の修繕人
夜が終わる前に、天幕の破れは町会へ届けられた。倉庫番のハダは濡れた布の端を調べ、刃物で切られた痕があると記した。町会長は後日、被害額を査定すると告げ、残った客を帰した。宴の寄付箱は予定どおり三人立ち会いで開かれ、金は救貧院へ渡された。
シオンは一人仕立場で黒花の布片と同じ糸を隠した。もう一度使えば、いずれ調べられるだろう。外では夜更けの風が吹き、隣の舟大工が翌朝の仕事へ備えて木材を覆っていた。彼は天幕の縫い代の癖を知っている。自分が傷を付けたことは、職人なら見抜くはずだ。
サナたちは天幕を縫うだけでなく、今後の催しでは結び目の位置を変えるよう提案した。破れが一か所広がっても風を逃がせるよう、布を分割して吊るす方法だ。祭礼係は費用を気にしたが、昨夜倒れた杯の数を記した紙を見て、検討すると答えた。リナは大きな布へ針を通す途中で指を刺し、ヴェグが水を持ってきた。彼らの仕事は華やかな宴の後始末でありながら、誰かの次の集まりを守る準備でもある。シオンの名は一度も出なかったが、彼が開いた傷は確かに手元に残っていた。
夜明け、修繕を頼まれたのは別の仕立屋だった。サナの共同工房が、祭礼用の丈夫な布を扱っているからである。サナは裂け目を広げて調べ、切り口の角度から何者かが意図して刃を入れたと判断した。リナは濡れた布を干し、ヴェグが新しい縫い代を取る。
仕立場の窓から、シオンは荷車に載せられた天幕が通るのを見た。黒い花を名乗って裂いた布は、別の職人の手で直される。そのことが腹立たしくも、どこか誇らしくもあった。彼は初めて、誰かに罪を着せず自分の印で傷を残した。町はまだ、その名を口にするほど暇ではなかった。




