裂かれた天の布
宴の歌が二つ終わった頃、天幕の西側から布の裂ける音がした。シオンが縫い代へ短く小刀を入れたのだ。継ぎ目に沿って長い裂け目が走り、外の冷えた風が灯を揺らす。杯がいくつか倒れ、客が立ち上がった。梁そのものは傷つけておらず、天幕は落ちなかった。
人々は最初、強い風のせいだと思った。職人が幕を押さえ、子供を中央へ寄せる。シオンは黒い花弁を染めた布片を裂け目へ結び、縫い代が不自然に切れたことを隠さなかった。誰かが意図して宴を傷つけたと、知ってほしかった。
宴の外側では、調理場の女たちが倒れた皿を数え、温かい汁を小鍋へ移し直していた。歌を聴いていた楽師は、慌てて楽器を抱えると一人の子供を支えた。杖をついた老人は自力で歩けず、近くの商人が椅子を押して屋内へ運んだ。シオンが見たかったのは怯えた顔だった。しかし人々は恐れながらも、隣にいる者の手を取る。誰かの失態を嘲る者さえ、暗い場所では足元を確かめていた。天幕の端から落ちた細い露が床を濡らし、皿を運ぶ女が滑りそうになった。その一歩だけは、刃を入れる前には思い至らなかった。
未亡人の娘は外の星が見えることを喜んだが、母親は寒がる弟の肩へ外套を掛けた。商人の一人は怒り、客の安全を確かめるより先に賠償額を数え始めた。町会長は逆に、会場の一角を早く閉じ、残りの食事を屋内へ移すよう頼んだ。思い思いに動く人々を、シオンは幕の陰で見ていた。
彼は誰も死なぬよう切ったつもりだった。しかし寒さを避けて人が一斉に動けば、転ぶ子供もいる。運び出す皿は割れ、歌は途中で途切れた。自分が選んだ刃の長さで、結果のすべてを測ることはできない。シオンは小刀を収め、会場の灯が次々に消えていくのを眺めた。




