星を隠す天幕
宴の夜は薄曇りだった。港の広場には大きな天幕が張られ、卓ごとに灯が置かれている。役者のアリスは開会の歌だけを頼まれ、悪王の仮面を着けずに声を響かせた。子供たちが拍手を送ると、彼は深く頭を下げた。見世物の悪は、今夜ここへは呼ばれていない。
シオンは仕立物の不具合に備えて会場外の小部屋へ控えた。未亡人の襟飾りを直した職人として、彼女の席へ近づく許可があったからだ。宴の中では商人が干し薬草の輸送について話し、町会長が新しい渡し場の予算を尋ねている。華やかな光の下でも、交わされるのは細かな仕事の話だった。
裏口で働く皿洗いの少年は、客の話より使う水の量を気にしていた。大きな宴では鍋も杯も数が多く、湯を沸かす薪が予定より早く減る。料理人は倉に追加を頼み、皿洗いたちは冷たい水で手を痛めないよう交代で休んだ。シオンが部屋の脇を通ると、少年が彼の黒衣を見上げた。「その服、油を吸いやすいよ」。忠告は短く、悪名への興味はなかった。青年は袖をたくし上げ、あらかじめ預かった替えの糸を取り出した。星の見えない天幕の下では、誰もが別々の役目を背負い、終宴の刻まで働いていた。
中ほどの卓で、陶器問屋が借金を返す約束を先延ばしにしているのを聞いた。相手の商人は声を荒らげず、翌週の支払日だけ確認した。シオンは名を明かさず彼らの前に立ち、無理に会話へ割り込むこともできた。しかしどんな侮辱より、彼らが自分を知らないことが腹立たしい。
外へ出ると、曇りが切れて数個の星が見えた。天幕は人々を寒さから守る一方、空を隠している。シオンは布の端を指でつまみ、裂けばどんな音がするか確かめた。彼の小刀は懐にある。誰にも気づかれぬまま、使うか使わぬかを選べる距離だった。




