三枚の座席札
晩餐会の前日、会場の席札が三枚見当たらなくなった。書記が調べると、掃除の際に箱の底へ落ちていただけだった。だが一時は遺族席の札まで紛失したと思われ、職員は青ざめた。町会長は飾り付けを一度止め、各席の番号を確認し直した。
シオンは会場で余った布を縫い直していた。騒ぎの間、壇上には高価な銀器が無防備に置かれていた。もし自分が盗みを働けば、人々はそこへ目を向けるだろう。だが彼が欲しいのは銀器ではない。誰も触れようとしないものを奪い、重要だと思わせることだ。
飾り付けの責任者は、欠けた席札を探す間に布の色が違うことへも気づいた。三枚だけ濃い藍で縁取られており、ほかの卓から浮いている。裏方の若者は急いで新しい札を切ったが、書記はすぐ捨てずに理由を確かめた。藍の札は以前の船祭りで使った余りで、倉庫の底へ紛れたのだという。古いものを使い回していた手間も、無駄にしない工夫も、作業の裏には残っていた。シオンは机に並ぶ札を眺め、名前一つで人の座る場所が決まることを不思議に感じた。紙を入れ替えれば席は変わるが、座る理由までは変えられない。
彼は照明を吊るす縄の結び目を見上げる。火の粉が落ちぬよう、水桶が隅に置かれていた。用心は十分ではない。シオンは余計なことを考えた自分を嗤う。宴で人を恐れさせたいからといって、会場を燃やすのは、ただの粗末な破壊だ。
夕刻、席札はすべて揃った。未亡人の札には子供たちの名も書かれている。彼らの席がどこになるか、母親自身が決めたのだと職員は説明した。シオンはその札を見て、まだ何一つ手を下さない自分に焦りを覚えた。焦る理由は、悪への信仰ではなく、他人が先に暮らしを整えてしまうことへの嫉妬かもしれなかった。




