細工師の答え
錠前師の父親は寄付箱を仕上げると、祝い金の一部を弟へ渡した。長男が町を離れた後、弟は図面を勝手に使わず、夜な夜な自分で仕組みを考えてきた。父親は弟の新しい錠を試し、前より使いやすいと認めた。兄へ報告する手紙も書くという。
シオンが仕立場から革帯を持ってくると、老父は椅子へ座るよう言った。頼まれたのは、寄付箱を運ぶ際に革が伸びないか確かめることだった。青年が箱を持ち上げると、重さで片方だけ傾く。弟は金具の位置を直し、もう一度持たせた。
弟の錠は古い仕組みより少し複雑で、鍵を捻り過ぎても壊れない工夫があるという。父親は最初それを余計な細工だと思ったが、年寄りの指にも扱いやすいと知って考えを変えた。兄は別の町へ行き、弟は店に残った。兄弟のどちらが優れているか比べるのではなく、いまいる者の仕事を認めることが店を続ける道になった。シオンは革帯の端を引き、金具が食い込まない幅に整えた。父親は納品書へ署名し、箱を台車へ載せる。扉の前で台車が揺れると、小さな鈴が短く鳴った。誰もその音を不吉だとは思わなかった。
「錠は、破れないから良いんですか」とシオンが尋ねた。父親は首を振る。「開けるべき人が、開けるべき時に開けられるから良い」。閉じ込める技術は、いつか必ず開く手順と一緒に作るのだという。シオンには思いも寄らぬ答えだった。自分が人へ向けたい恐怖には、開ける手順がない。
納品を終えた後、弟が余った革を持ってきた。傷の少ない端切れは人形の靴に使うという。シオンは短い革紐を二本渡した。仕事の値を受け取り、名を名乗らずに帰る。後ろでは二人の職人が新しい錠の動きをもう一度試していた。




