炉端のうわさ
陶工の仕事場で、晩餐会の招待章を持つ問屋が弟子たちへ自慢していた。彼は港商会に貸した金が戻ると信じ、大きな窯をもう一つ注文したのだという。職人たちは祝ったが、親方は燃料代が上がっていると冷静に答えた。新しい窯を持っても、粘土と薪がなければ器は焼けない。
客が去ると、弟子の一人が問屋の高慢さを笑った。別の弟子は、借金の証文を見せびらかす人間ならいつか失敗すると言う。親方は、失敗を待つより割れぬ器を作れと叱った。その叱り声が、戸口で革帯を届けたシオンの耳にも届いた。
陶工の親方は注文票を読み上げ、器の寸法が一寸変わるだけで焼き時間も違うと教えた。弟子は誰が窯を使うかで言い争っていたが、親方が仕事の順を示すとようやく手を動かし始める。窯の薪を運ぶ女は問屋が来る前から働いており、彼の自慢話を聞かずとも今日は同じ数の束を積んだ。シオンは炉の赤い光の下で、他人を見下す者とその下で働く者を一つに括れないと思った。帰る時、窯の口から灰が舞い、袖の黒い布に白い粒が付いた。彼は払い落としたが、細かな灰は縫い目の間へ残った。
シオンは問屋の借用証に興味を持った。秘密を暴けば高慢な者が青ざめるだろう。しかし証文には、貸した側と借りた側の名前が並んでいる。どちらか一人だけを辱めることは難しい。町の金の流れを脅迫の道具にすれば、炉に薪を運ぶ弟子も巻き込む。
仕事場の帰りに問屋が落とした細い封筒を拾い、シオンは中身を見ずに返した。問屋は当然のように受け取る。感謝さえなかった。その無礼さが、かえってシオンの心を刺した。彼は一度だけ振り返り、あの男が人を見下す癖を、自分の悪への憧れと重ねて考えた。




