真鍮の招待章
港商会は交易の安全を祝う晩餐会を開くと告げ、商人に真鍮の招待章を配った。市の名誉ある出資者だけが座れる席もある。ヴィルは仮面の売れ残りを片付けながら、招待章を磨く仕事を請け負っていた。シオンは仕事場で小さな金具を見せられ、裏に彫られた番号が席順を示すと教わる。
番号が多いほど高位というわけではない。交易品ごとに出入口を分け、火事の時も混乱しないよう配列されている。高価な章を手にした者は、それでも自分が上に立ったように振る舞いたがる。ヴィルは笑い、誰もが同じ扉を通ればいいのにと言った。
招待章を磨くヴィルの店には、異なる形の飾りが積まれていた。古い船の舵を象った品は昨年の寄付者へ渡され、新しい波形の章には安全な航路の地図が刻まれている。彼は値段より、誰へ渡すものかの違いに気を配っていた。遺族席の章を手に取ると、角を丸くしてほしいと書記から頼まれたことを思い出す。子供が握っても痛くないようにするためだ。シオンは細かな仕事を見ながら、一つの宴へ集まる人々がみな同じ理由で参加するのではないと理解した。窓辺には磨き終えた章が、昼の光を受けて揺れていた。
シオンが一枚の章を胸へ当てると、昔の黒い外套より似合わない気がした。招かれぬ者が宴を止めるなら、盗賊のように金品を奪う必要はない。彼は席順の印が少しずつ人の尊大さを育てていることに興味を抱く。
その夜、港商会の事務室では若い書記が座席表を書き直していた。水難で父を失った舟番の遺族席を用意しようという提案が通り、招待章が三枚追加されたからだ。偉い商人の席を一つ減らす話では揉めたものの、書記は最後に母子の名を丁寧に記した。シオンの知らぬところで、その宴は富だけでなく、失った命を覚えるためにも準備されていた。




