川端の赤い靴
干し草の市で、小さな赤い靴が片方だけ売られていた。革職人の印はミラの工房のものに似ている。シオンが手に取ると、露店の女は片方しかないから安いと笑った。中敷きには子供の名が書かれ、踵はほとんど減っていない。彼は修理できる品だと言ったが、もう片方は川へ落ちたと聞かされた。
露店の女は古着を買い集め、洗って売る仕事をしている。靴の持ち主は急に大きくなり、片方を失ってから別の靴を履いたそうだ。川で拾われた品だと噂する者もいたが、女は持ち主から代金を払って譲られた証拠を見せた。シオンはそれ以上聞かなかった。
赤い革靴の縫い目には、親指ほどの補強が入っていた。幼い持ち主が急に走り出しても踵が外れないよう、以前の職人が工夫したのだろう。シオンは靴をひっくり返し、色褪せた糸を見て仕事の丁寧さを想像した。露店の女は客のために靴底を拭き、余った布で簡単な包みを作っていた。隣では古い地図が売られ、旅の商人が川の流れが変わった場所を教えている。一つの品が持つ意味は売り手と買い手で違い、どちらにも嘘はない。シオンはその当たり前さを、少し眩しいものとして見つめていた。
帰り道、彼は橋の上で川面を覗いた。自分が偽の警告を出した日にここで待った人々も、いまは別の靴を履いて歩いている。彼らが受けた不便はなくならないが、それで人生が止まるわけでもない。彼が自分の名を残そうとするほど、誰かは新しい靴を選ぶ。
夕方、赤い靴を買い求めた若い母親が露店に来た。子供の人形に履かせるつもりらしい。女は値を少し下げ、母親は嬉しそうに包みを受け取った。失くされた片方の代わりに、思いがけない場所へ旅立つ小さな品。シオンは何も買わず、露店の灯がともるまで川端を歩いた。




