焔色の検品票
術灯の検品票が青から焔色へ変わると、港の整備士たちは一斉に道具を置いた。交換する導線に熱の偏りがあり、触れれば指を傷めると分かったのだ。魔術師リスベルは熱を逃がす術式を組み直すと告げ、港務官は夜のうちに灯を二基消すことを決めた。
新しい灯に慣れた船頭たちは、暗い水路が戻ることを怖がった。古い鈴と反射板を取り付け、熟練の舟番が交代で見張る。シオンは灯の革覆いを受注していたが、検品票の色が変わったため、納期を延ばした。仕事は簡単に増えも減りもする。
助手は不合格札に自分の署名を加え、後で誰でも理由を確かめられるよう温度表を添えた。港務官はその記録を受け、灯の近くに荷を積まない区域を縄で囲んだ。船頭が迷わないよう、夜の合図も新しく決め直す。赤い検品票を見た一人の商人は、また金を掛けるのかと苦情を言った。リスベルは壊れた灯より人の指を直す方が難しいと返した。翌日、整備士は石灰で柱に新しい線を引き、子供が入り込まないよう低い柵を設けた。光が消えた後にも、守るべき場所は残っていた。
リスベルの助手は不合格の札を取り下げたいと言い、師に叱られた。何も起きなかったことを安全の証拠にするな、と。少女は顔を赤くし、熱の記録を書き直した。シオンは橋の偽札を思い出す。彼が人を止めたのは、守るためではない。本当の警告まで疑われれば、怪我をするのは一番遅く情報を得る者だ。
夜、見張りの鈴が一度だけ鳴った。遅れて入る小舟が水路を誤ったのである。舟番は手を振り、低い声で正しい進路を伝えた。灯が消えても人は別の手段を探す。恐れを知る人々の工夫は、シオンが付けた黒い名を必要としなかった。




