折れた秤の針
港の秤場では、穀物を量る大秤の針が朝から揺れていた。舟が揺れるせいではない。台座の下に湿った砂が入り、足がわずかに沈んでいた。倉庫番のハダは計量を止め、石を運んで台座を水平に戻すよう命じた。船長は昼の潮を逃すと怒ったが、秤の数字で支払う賃金まで変わってしまう。
シオンは注文の革紐を届け、倉庫の端で修理の様子を見た。新しい管理人は誰を信用するかではなく、誰が量っても同じ数字になるかを気にしていた。ハダは針が安定すると袋を一つずつ持ち上げ、以前の記録との差を赤で記した。ロマス時代の帳面にも、同じ場所で奇妙な誤差が残っているという。
台座を固める石は、港務所が昨年橋の補修で余らせたものだった。石工の若者は縁を削って四隅へ据え、重い袋を載せて試した。袋を持ち上げる荷役人の肩には古いあざがあり、彼らは測定値が一分ずれるだけでも何十袋分の支払いへ影響すると知っていた。船長が何度も時計を見たため、ハダは潮位の高いうちに積める袋だけ先に運ぶ案を出した。秤を止める判断と荷の移動は矛盾しない。誰かが正しい手順を作り直す間、別の誰かが舟を守っていた。
若い荷役人が昔の過不足をすべて不正だと断じかけた。ハダは秤の錆びた軸を示し、それなら損をした人も得をした人も調べ直せと言う。言い返せない若者の肩を、年配の船員が軽く叩いた。シオンは不正の一語で人を吊し上げる誘惑を感じる。犯人がいなくとも、疑いを植えれば港は止められる。
だが秤場に彼の花は要らなかった。昼過ぎ、ハダは針を封印し、旧い計量表と新しい表を同じ板に掲げた。船長は遅れた分だけ荷を急いで積み、港務所は追加の明かりを用意した。シオンが帰る頃、赤い訂正の数字は潮風に揺れながら、誰にでも読める場所に残っていた。




