祝われない帰還
騎士候補生エルクは北辺での訓練を終え、短い休暇で家族の村へ帰った。村の人々は彼を歓迎したが、大きな宴は開かなかった。母親は畑仕事を手伝うよう頼み、父は倉の屋根を直す道具を渡した。エルクは剣を置き、古い板を外し始めた。
妹は兄の鎧に触りたがった。エルクは金具の尖った部分を見せ、勝手に持つなと注意した。戦場を知らぬ子には、輝く鎧より先に重さと傷の危険を教えねばならない。妹は不満そうだったが、木槌を持って屋根の仕事を手伝った。
村では夏の麦刈りに備え、納屋の床を乾かしていた。エルクは妹に刈り入れの順序を教えられ、訓練で覚えた隊列とは違う手際に苦笑した。父親は息子が戻ったからと仕事の指揮を任せず、慣れた近所の農夫へ相談する。剣の腕と畑の知恵は同じではない。夜、家族は風の向きを話し合い、明日の雨に備えて布を寄せた。遠い町の黒い花については、誰も食卓で語らなかった。
夜、父親は村の橋が傷んでいると話した。町会へ申請は出したが、修理の順番はまだ先だという。エルクは休暇中に見回りをすることにした。自分が騎士になるからといって、村の予算が増えるわけではない。
一方ルーヴェルでは、シオンが閉鎖札の罰を受けたと噂になっていた。エルクの耳にその知らせが届いたのは数日後、街道の便りを読んだ時だ。彼は少し眉をひそめたものの、翌朝の畑仕事を先に終えた。
夜更け、エルクは古い靴紐を交換した。人を守るために何を学ぶべきか、まだ答えは出ない。村の小さな橋を見ていると、英雄などと呼ばれる日が来るかどうかも、彼には遠い話だった。




