答えを持たない衛兵
バルトはシオンを詰所へ呼び、橋の閉鎖札について話を聞いた。黒板の寸法、置かれた時刻、刃物の痕。シオンは一つずつ答え、自分が作ったと認めた。誰にも命じられず、誰かを守るためでもなかったと告げる。
衛兵は怒鳴らなかった。ただ、事故が起きていればどうしたのかと尋ねた。シオンは答えられなかった。起こしていない事故の責任を、起こる前に数えることはできない。だが起こらなかったから罪ではない、とも言えない。
バルトの机には橋の損傷図と、今年から新しくなった巡回表が置かれていた。シオンの行為を調べる間も、衛兵は北の家畜盗難の報告を受け、迷子になった子供を家へ返している。昼の食事を途中でやめ、同僚へ鍵を渡す姿を見て、シオンはこの男にも自分と無関係な仕事が山ほどあると気づいた。悪を名乗る自分が現れれば、相手がいつでも向き合ってくれるという考えは、今となっては滑稽だった。
「お前は何になりたい」。バルトの問いに、彼は悪の華になりたいと答えた。ずっと胸に秘めてきた言葉を口にしても、衛兵は笑わなかった。困った顔をして、机の上の記録を見た。
バルトは若い頃、戦で村を守れず逃げたことがあると話した。英雄になるため衛兵を続けているのではない。ただ、誰かが道に迷った時、戻る場所を示したいという。シオンはその言葉を聞き、同じ道の反対側に立つ自分を想像した。
調書を終えた後、衛兵は手続きを進めた。シオンを許したわけでも、憎んだわけでもない。外では子供が鐘の音を数えていた。詰所を出る前、シオンは橋の安全を脅かす者へどんな罰があるのか、正確に尋ねた。




