一人だけの仕立場
水路沿いの古い物置を借り、シオンは一人で仕事場を作った。窓は小さく、雨漏りがあり、壁には冬の湿気が残っている。家主オルデの紹介で、修理代の安い場所を探した。机を置くと部屋の半分が埋まり、黒い外套は梁に掛けるしかない。
初日の依頼は破れた袋の補修だった。客は顔を見て少し迷い、それでも他の店より安いので品物を預けた。シオンは見積もりを出し、材料費を受け取った。悪事のために失った信用は、手仕事でも少しずつしか戻らない。
物置の隣では、舟大工が朝から板を削っていた。音がうるさいと家主に相談する者もいたが、夕方には作業をやめる約束ができている。シオンはその音を聞きながら、机の脚の長さを揃えた。誰かが自分を恐れる場所を欲しがっても、家主は雨漏りと家賃しか気にしない。隣人は鋸の音を立て、通りの少年は犬を追いかける。その無関心が憎らしくもあり、無関心だからこそ新しく始められるとも感じた。
夕方、ネラが来た。橋の騒ぎをしたのはあなたかと聞き、彼が認めると、しばらく黙った。「私が知っている限りのことは役所へ話す」。彼は止めなかった。彼女が友人としてではなく、町で暮らす一人として判断しているのが分かった。
机の上には公領の損害請求の領収書が置いてある。払った金は帳簿から消えたが、あの村で流した嘘は消えない。橋の板も同じだ。シオンは何度も同じやり方を繰り返す気にはなれなかった。別の悪を探さなければ、ただの迷惑者で終わる。
夜、雨音が屋根を叩いた。天井の隙間から水が落ち、床へ小さな池を作る。シオンは桶を置き、次の朝の仕事が濡れないよう革布を掛けた。黒花の名とは無関係に、雨漏りは直す必要があった。




