知っていた筆跡
掲示板に回収された黒板が置かれ、情報提供を求める紙が添えられた。板を切った刃の痕と、花の彫り方は特徴的だった。サナは仕事帰りにそれを見て、シオンの道具を思い浮かべた。確信はない。しかし考えないわけにはいかない。
翌朝、彼女は彼を工房へ呼んだ。「あの板、あなたなの」。シオンは否定しなかった。なぜそんなことをしたのか聞かれると、名前を恐れさせるためだと答えた。サナは椅子から立ち上がり、作業台に手をついた。
ヴェグは道具棚の奥から、シオンが最初に作った革の型を出した。傷んでいるが、まだ使えるものだった。置いていくかと尋ねられ、シオンは持ち帰ると答えた。三人はその型を直した日に、初めて共同工房の利益を分けたという。誰かを脅すためではなく、仕事を続けるために集まった四人だった。ケルは最後の勘定をつけ、残りの持ち分を細かく計算した。追い出す相手へも正確に払うことが、三人にとっては大切だった。
「私たちが守ってきた橋を、あなたの飾りにしたの」。彼女の声は震えた。シオンは自分の願いを語ろうとして、相手が聞く義務などないと思い直した。代わりに、被害を受けた人の請求は自分が引き受けると伝えた。
サナは金で済む問題ではないと繰り返した。工房を信じてくれた客まで、不安にさせたかもしれない。今度こそ共同の契約を終えるという。ヴェグもケルも署名し、リナは顔を伏せていた。
シオンは道具箱を持ち、工房を出た。空になった棚を誰かが使うことになる。黒衣を着た自分が帰らない場所を、また一つ増やした。背後では針の音がすぐに戻った。




