↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪の美学――染物師の弟子は、最高のヴィランを目指す  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/168

広場の影絵

町の秋祭りに、旅芸人の一座が来た。広場の幕には巨大な竜と魔術師の影が映り、子供たちは椅子から身を乗り出した。シオンは演目の終わりに現れる黒衣の悪王を見て、思わず拍手した。悪王は炎を吐かず、長い沈黙の後で一言だけ命じる。その間に観客の笑い声が消えた。

公演後、シオンは影絵師のアーデに近づき、どうすれば人を恐れさせられるか尋ねた。アーデは幕の裏へ招いた。悪王の影は薄い木板に過ぎず、遠近をつけるのは灯の位置だった。「見せたいものを大きくすると、隠したい手も目立つよ」。彼女は板を少しずらし、悪王をただの細い人形へ戻した。

シオンは衣装を見直した。襟が高く袖が広いほど、実際の動きは鈍る。影を作るには姿だけでなく、周囲の光や人の視線まで要る。彼は簡単な幻灯具を買い、小屋で練習を始めた。

広場では旅芸人たちが翌日の雨に備えて幕を乾かしていた。一座の若い笛吹きは喉を傷め、代役探しで大忙しだ。観客が受け取った恐怖も、裏側では数えきれない小仕事に支えられている。

影絵師は使い古した幕のほつれを自分で縫っていた。シオンが手伝うと、針を持つ指の速さを見て職人だと見抜く。「見せ物が好きなら、後片付けも覚えなよ」。一座の馬丁は馬の蹄を調べ、若い役者は昨日の失敗した台詞を練習している。観客がいない時間にも、旅芸人の暮らしは途切れなかった。彼は一瞬、自分が望む舞台にはこうした裏方がいるのかと考えた。

帰り際、アーデは「人を怖がらせたいなら、あとで眠れる場所も考えて」と言った。舞台が終われば観客は家に帰る。その境目がない恐怖について、シオンはまだ考えたことがなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。