無人の審問席
ロマス商会の追加審理の日、傍聴席は半分も埋まらなかった。港の仕事が戻り、人々は船荷や家の修繕へ帰っていた。証人の一人は子供の熱で欠席し、審理は別の日へ延ばされた。シオンは午前を空けて来たが、名前を呼ばれぬまま待った。
ロマスは法律家と並び、古い契約の署名を確認していた。かつての商会主は少し痩せ、髭に白いものが混ざったように見える。それでも手には清潔な手袋を付け、書類をめくる動作に乱れがない。
廊下の窓からは、仕事を終えた船員が肩を並べて歩く姿が見えた。彼らの中にはロマスへ未払いを訴えた者もいる。しかし今日は別の船に雇われ、明日の潮を心配している。シオンが望んだ清算は、法廷の中で大きな言葉になるのではなく、こうした生活の再開として現れていた。彼は自分の悪が商会主の首を取るほどでなかったことを惜しんだ。けれどそれを願う気持ちと、誰かが仕事に戻ったことを喜ぶ気持ちは、別々に胸へ残った。
シオンは相手の崩れる姿を見たいと思っていた。だが長い手続きと生活の変化は、劇的な破滅を与えない。商会の責任者を失った人々がそれぞれ新しい仕事を覚え、町の川は変わらず流れる。
休廷の廊下でロマスが声をかけた。「あなたが欲しかったのは、私の涙ですか」。シオンは返事をしなかった。相手も続けず、法律家の後ろを歩いた。二人の間に残ったのは、誰かの賃金を奪った事実と、黒い封筒に書かれた脅迫だけだった。
帰り際、フォルが相談員と話しているのを見た。少年はこれから別の宿駅で働くという。シオンが名を呼ぶと、小さく頭を下げて去った。誰かの悪が終わったと実感するのは、裁判の言葉より、そうした新しい行き先なのかもしれない。




