倉庫の空いた棚
港の共同倉庫で、ロマス商会が使っていた棚がついに空いた。荷札の痕だけが柱に残り、床には長年積み上がった塵がある。新しい管理人は棚を洗い直し、重さごとに置く場所を変えると決めた。作業を手伝うのは元商会の荷役人たちだった。
フォルも短い期間だけ雇われ、帳面と実際の品数を照らし合わせた。彼は借金の審査を続けながら、今月の家賃を払うために働いている。祖母の足はまだ悪いが、二人で小さな畑を耕しているという。
新しい管理人は柱に貼られた古い札を剥がし、使えるものと捨てるものを分けた。札の裏には夜警の交代表が書かれ、人手不足の日が赤く囲まれている。ロマスが一時期本当に港を支えたことも、記録から消せない。フォルは古い札を帳面に挟み、未払いの仕事と支払われた仕事を分けて数えた。シオンは札を奪って燃やすことが、被害の記録まで燃やす行為になると知った。誰かの悪を粛清するとは、痕跡を消すことではないらしい。
シオンは彼に声をかけた。フォルは礼も恨みも言わず、「あなたが倉庫へ来ると、誰かがまた騒ぐと思う」とだけ答えた。シオンは否定できなかった。自分が望んだ悪名は、他人にとって迷惑の予告でしかない。
新しい管理人は二人の話に興味を示さず、棚へ載せる箱を数えた。仕事の手順は見直され、軽い荷は上に、重い荷は下に置く。安全を守る手順は、それだけで意味を持っていた。
倉庫を出たシオンは、ロマスの名がいつか忘れられることを考えた。商会主がどれほど金を奪っても、棚は空になり新しい木箱が収まる。名を残すには、ただ人を苦しめるよりずっと厄介な何かが要るのだろう。




