小さな保護命令
ルーヴェルの北門で、若い下働きが雇い主から逃げてきた。賃金を前払いしたのだから一月は辞められないと言われ、腕に青い痕が残っている。彼は衛兵バルトに助けを求め、詰所の椅子で震えていた。
バルトは雇い主の話も聞き、逃亡に対する制裁が不当だと判断して一時保護を決めた。賃金の前払いは返す必要があるかもしれないが、暴力で引き留めてよい理由にはならない。小さな命令書が出され、下働きは今夜だけ救貧院に泊まることになった。
救貧院で働く修道女は、下働きへ清潔な寝具を貸した。負傷した腕を見て医師を呼び、雇い主の家へ戻るかは後で決めようと告げる。少年は翌朝の仕事を失うと心配したが、修道女はまず食べるよう勧めた。バルトはその費用を町会の一時保護枠へ計上した。シオンが黒い封筒を送るより前に、何人もの手が少年の生活を支えていた。彼はその事実を認めたくないのではなく、認めてもなお悪を望む自分が恐ろしくなった。
シオンは話を聞き、雇い主を訪ねた。相手は自分の権利を主張し、腕の痣は階段で転んだだけだと嘘をついた。シオンは胸元から黒花の封蝋を取り出した。威圧する言葉が喉まで出かかったが、すでにバルトが手続きを進めている。
彼は雇い主の家の門へ何も残さなかった。夕方には詰所へ戻り、下働きが安全な場所で眠れると確認した。それが自分の行動でなくともよかった。いつから自分は悪人を恐れさせる代わりに、被害者の身の安全を確かめるようになったのだろう。
救貧院の食堂では子供たちがパンを分けていた。シオンは窓越しに灯を見て、自分の美学が善意へ薄まっていくことに危機感を抱いた。悪になると決めた理由を、もう一度自分で確かめねばならない。




