四つ目の術灯
港の術灯は、四つ目の設置場所を巡って揉めていた。川の外側には岩場があり、舟番はそこを先に照らしたい。一方、製粉商は倉庫への曲がり角に灯が必要だと言った。町会は予算を一基分しか出せず、リスベルはどちらも危険だと説明する。
シオンは灯の取り付け金具を工房へ注文するため、会議を覗いた。設計図には術の流れだけでなく、落雷時に魔力を逃がす溝が描かれている。事故のための工夫は、実際に事故を経験した者の言葉から生まれていた。
リスベルの助手は、昼に使う灯と夜に使う灯の魔力消費を記録していた。数が増えれば術師一人の力では点検しきれない。港務官は術を使えない船頭でも故障を見分けられるよう、小さな旗を取り付ける案を出した。助手は図面を直し、鍛冶屋は旗の位置を調整した。光を作るだけでは安全を守れないと、若い助手も学んでいた。シオンは誰かに継がれる技術を、ひとり占めできないことが少し羨ましかった。
町会は船の通過数を調べ、事故の記録を照らし合わせた。港務官は岩場に先に付け、倉庫の道には反射板を増やす案を採用した。不満は残るが、全員が自分の要望を押し通せる予算はない。
作業の夜、リスベルがシオンの手元を見て尋ねた。「あなたは悪いことがしたいのか、それとも悪い人に見られたいのか」。彼はすぐに答えられなかった。町の光に照らされた黒衣が、どちらの姿にも似合わないからだった。
灯が試験点火されると、川面に細い光が走った。渡し船は進路を少し変え、岩から距離を取る。人を導く道具は誰に使われても同じように働く。シオンは自分の名を刻む道具も、いつか意図から離れることを思い知った。




