ミラの新しい弟子
昔の染物工房を訪ねると、ミラは若い弟子に藍を混ぜる方法を教えていた。弟子の名はテオ。シオンがかつて立っていた作業台には、新しい傷がいくつも増えている。ミラは客として彼を迎え、外套の裏地を直すなら代金を先払いしろと言った。
テオは黒い衣を興味深そうに見た。袖口の縫い目が丁寧だと褒めると、ミラは自分が昔教えたものだと答える。シオンは久しぶりに、ここで過ごした夜の匂いを思い出した。染料を洗う水と、火を落とした竈の灰の匂い。
テオは古い染桶の縁に、染料を混ぜる量の目盛りを刻んでいた。シオンが以前作ったものより細かく、しかも雨に濡れても読める。ミラは自分が教えた以上の工夫を見て嬉しそうだった。シオンは弟子が増えれば自分の痕跡が消えると思いかけたが、最初に習った縫い目はそのまま若者の手へ伝わっていた。技術は誰かが使うほど生き残る。恐怖もそうなのか、と彼は考え、同じとは限らぬと自分で首を振った。
仕事の合間に彼は公領で使った修繕法を話した。湿気の強い道でも革紐が緩みにくい結び方だ。テオは熱心に覚え、ミラは実際に試してから採用を決める。技術だけは持ち帰ることを歓迎された。
シオンが黒花の噂について尋ねると、ミラは町には別の話題がいくらでもあると答えた。港の新しい灯や、橋の工事、救貧院の資金不足。悪の名は、彼が思うほど人々の中心にない。
夕方、裏地を受け取る際にミラが言った。「針を持てるうちは、いつでも仕事を探せる。あんたが何を選ぶかは別の話だ」。シオンは礼を言った。黒衣の裾は見事に直され、その衣で何をするかだけが持ち主の責任として残った。




