↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪の美学――染物師の弟子は、最高のヴィランを目指す  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
152/156

誰のための嘘

水車の地主は、シオンへ正式な抗議状を出した。脱税の疑いを流されたことで取引が二件止まり、商人から説明を求められているという。シオンは受け取った紙に大きく黒花を描き、返信を書こうとした。挑発的な一文を考えるほど、あの朝の代理人の青ざめた顔が思い浮かぶ。

フェルマが宿へ来て、事実関係を確かめた。税の記録を調べたが、現時点で脱税の証拠はない。契約は厳しいが、違法と断じるのも難しい。土地の慣習と公領の新しい農業規則が食い違っているのだという。

巡察官は宿の机に地図を広げ、村と水車の位置を示した。上流の小さな堰が破れれば、別の地主の畑まで浸水する。水車だけを奪い返しても周囲の水管理を無視できないのだ。シオンが噂を流した日の朝、堰を守る人々は何も知らず働いていた。彼はその仕事を見なかった。フェルマは責任を認める言葉を調書へ写し、彼が後悔しないと言っても罪が軽くなるわけではないと説明した。

シオンは嘘だったと認めた。フェルマは理由を尋ねる。彼は「恐れさせたかった」と答えた。水車を守りたかったのではない、地主の顔を見たかったのだと。巡察官はしばらく黙り、それなら村人はあなたの遊びに巻き込まれたのだと告げた。

その言葉は彼の夢を否定しなかった。むしろ、自分が最初から望んでいた悪の姿を映した。誰かの生活を傷つけ、その事実を知ってなお自分の満足を選ぶ。もう善行のように飾ることはできない。

夜、彼は返信から黒花を消し、事実だけを書いた。嘘を流したことは認める。責任から逃げない。しかし後悔しているとは書かなかった。そんな言葉を差し出せば、恐れに価値があると信じた自分を安く売ることになる気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。