金を払う恐怖
中央町の商人組合は、店を荒らす悪戯が増えたため、夜警を一人増やした。費用を巡って店主たちが揉め、通りの外れで商売する者は恩恵が少ないと支払いを拒んだ。議長は多数決を提案したが、少数派が負担だけ負うことになると反対が出た。
シオンは会議を外から聞いていた。自分が夜の通りに黒い紙を貼れば、警備代はもっと上がるだろう。人が恐れを金へ替える仕組みを、ロマスは商売として完成させていた。だからこそあの男を嫌悪する。恐怖を看板に掲げて利益を隠す姿は、彼には醜い。
通りの夜警は高齢の父を持ち、昼には家の修理をしていた。巡回を増やせば身体がもたないため、組合へ代役を頼む。店主たちは金を出せばすべて済むと思いがちだが、実際に歩く足は一組しかない。シオンは屋根の下で雨宿りする夜警とすれ違い、目を逸らした。ここで人を脅せば、男は疲れた足でも立ち向かってくるだろう。それを試したい衝動があり、試せば自分がどれほど浅ましいか知る気もした。
ところが店主の一人が、以前火事で家族を失ってから夜警を必要としていると語った。家を守るため金を出す人の恐怖と、人から奪うため作る恐怖は違う。議長は通りごとに警戒の巡回数を調整する案を採用した。
夜の見回りでは、夜警が雨の降る裏路地を歩き、閉じた窓を一つずつ確かめた。シオンは黒衣を目立たせず、灯の外から眺めた。ここへ本当の悪が現れれば、一番先に立ちはだかるのは名もない夜警かもしれない。
宿の部屋で彼は手帳へ書いた。人を恐れさせることに値段があるなら、誰にその代価を払わせるかは自分が選ぶ。紙に書いた途端、その言葉は美しく響いた。実行する日が来れば、美しさだけでは済まないことも知っていた。




