灰色の仲介人
南市場には、表の値札にない荷を扱う仲介人がいた。ラウルという灰髪の男で、禁制品より運搬先のない余剰品を好んだ。シオンが税札の件を尋ねると、ラウルは必要な情報の値段として銀貨一枚を示した。シオンのひと月の小遣いに近い。
彼はそれを拒み、代わりに情報を渡すと提案した。革問屋の差し押さえが解除される見込みと、石切場の作業再開の日付だ。ラウルは片方だけを買った。「もう片方は町中が知っている」。値段の付け方の冷たさに、シオンは妙な魅力を覚えた。
ラウルは関税の命令書を見て、王都の財務院の印が古いと指摘した。昨年変わった文様が使われていない。命令書が偽物かどうかはまだ分からないが、どこかで古い版が使われた可能性がある。彼は答えを教える代わりに、調査の過程で見つかった倉庫の空きを知らせるよう頼んだ。
「私に手を貸せば、いずれ後悔するぞ」。シオンが低く告げると、ラウルは荷札を束ねながら「後悔は支払いが済んでからだ」と返した。
ラウルの店には品物の棚が少ない。代わりに、各地の宿駅を結ぶ地図と売買記録が壁を埋めている。シオンが港の名前を一つ読み違えると、男は静かに訂正した。似た名の町でも関税が違い、運び手の賃金も違う。間違いが誰かの破産に繋がりかねない。威厳とは、知らないことを知ったふりで通さない習慣からも生まれるらしかった。
その夜、シオンは男の背を思い出す。強さを誇示せず、約束の重さだけで人を集める。ラウルを見習うべきか、いずれ屈服させるべきか決められなかった。一方で市場の職人たちは、新しい納税通知が届く前に冬用の備蓄を進めていた。誰も仲介人の本当の仕事を知らないまま日々を過ごした。




