冬の荷札
北門に積まれた靴箱には、送り先ごとに異なる荷札が付いていた。辺境の砦へ向かうもの、街道の宿駅に置くもの、王都の倉庫へ戻されるもの。ネラに帳簿を習うシオンは、同じ革から作られた靴でも道が違えば価値が変わると知った。帳付けをしていると黒外套の袖が邪魔になり、腕まくりした。
北辺へ向かう隊商の責任者オルフは、荷札の一枚を指して怒った。王都向けの関税が上がり、荷の三割を引き渡さねばならないという。命令書には確かに印がある。だが北辺の兵へ届ける靴を徴収すれば、国境の宿駅が困る。役人は現行の規則を読み上げるだけだった。
シオンは、命令の出どころを調べて役人に恥をかかせたいと思った。善意ではない。大勢の男が一枚の紙に従う光景が羨ましかった。彼は送り状を複写し、書類の罫線と余白まで写した。夜になると、粗末な印章ではなく、誰が何のために署名したかを読み解こうとした。
調査の途中、オルフは独断で荷を半分だけ運び出した。残りは税役所の決定を待つという。荷車は減ったが、宿駅へ向かう家畜の餌も必要だったからだ。シオンは自分が手を下す前に状況が変わるのを見て苛立つ。
荷札を数えるトアの背には、古い毛布が縛りつけられていた。宿駅で眠る父へ持ち帰るのだという。隊商の責任者オルフは見習いの働きを褒めながら、納品予定を一日早めるか悩んでいた。急げば疲れた馬が倒れ、遅れれば山道が雪で閉ざされる。帳面の一列に収まった数字の陰で、何人もの夜の相談が続いていた。
ミラは帳簿だらけの食卓を見て言った。「服を作るときも同じだよ。体が先に動く。図面はそれを確かめるためにある」。シオンは針を机に置いた。人の動きを操るより、先にその動き方を知る必要があるらしい。




