名のない取引
石切場の脅迫を終わらせたのは、巡回衛兵の大捕物ではなかった。金髪の男に銅を貸していた高利貸しが、貸金を回収しようと手下を連れて現れたのだ。男は逃げようとして足を挫き、石工たちに捕らえられた。六人のうち四人は即座に散り、二人は自分から詰所へ歩いた。
シオンは石切場の入口で顛末を聞き、胸の内に苦いものが残った。自分の脅しは何一つ決め手になっていない。高利貸しの帳簿と石工の人数が勝った。見物人は、悪党が悪党に追われる姿を笑っていた。
町会は道具の弁償を命じ、組合は一部の手下に日雇い仕事を与えた。バルトは殴られた若者の証言を取り、貸金の取り立て方にも目を向けた。エダは酒場の床に新しい板を敷き、以前より少し早く閉店するようになった。誰もシオンの名を口にしない。
夜、シオンはネラへ帳簿の読み方を教えてほしいと頼んだ。「人を怖がらせるのに必要だから?」。彼は頷く。「それなら、まず損益を覚えな」。ネラは薄い帳面を投げて寄越した。字を習う子供向けの本より難しい数字が並んでいた。
ネラは帳面の最初の頁に、前払いと後払いの違いを書いた。シオンは数字を追うたび、自分が受け取った銅貨と使った薬代を思い出す。どちらも立派な悪のために払ったと言い張れなくはない。だが一行ずつ計算すれば、背伸びした若者の赤字でしかなかった。彼はその頁を破らず、帳面の表紙に名前を書いた。
その頃、王都では北辺への補給計画が議論され、港町では海路の関税が改められていた。ルーヴェルの騒動は報告書の小さな一行に過ぎない。シオンはまだ、誰かが待ち受ける悪ではなかった。それでも彼は、机の上で数字を一つずつ書き写した。




