関所の青い糸
北の関所では、通行証の裏へ青い糸を通していた。切れた糸は再使用を疑われ、隊列全体が止められる。イルダは荷馬の一頭に積んだ麦袋の角が糸に引っかからぬよう、毎回自分で位置を確かめた。
シオンは検査の遅さを責めようとして、窓口の若い係官が熱を出した同僚の分まで働いていると知った。待つ運送人の不満も正当であり、係官の疲れも本物だった。列の後方では母親が赤子をあやし、別の荷車は検疫用の餌を残り少なくしていた。
その場には、公領の農事係も立ち会っていた。種麦の許可を得るには作付け予定の証明が要ると説明すると、密輸をした御者はそんな紙を出す時間がないと怒った。係官は罰を免除できない一方、近隣の備蓄村から正規の供給を受ける道を示した。村の代理人は渋々書式を写し取った。誰も満足してはいない。しかし少なくとも種を奪うだけで畑を空にする危険は減った。シオンはその折り合いの鈍さを見つめていた。
昼、青糸の結び目を偽装した荷が一つ見つかった。運転手は関所の記録と違う品を運んでいたが、密輸品は宝石ではなく小麦の種だった。干ばつの村へ内緒で売るつもりだったという。王国は種の持ち出しを制限しており、領民は不足に困っている。
若い係官は法令どおり荷を留め、村の代理人に申立ての方法を説明した。シオンなら種を奪って農民へ渡すことも考えた。しかしどの村から抜いた種なのか、誰の畑が空になるのか分からない。彼は隊の記録を先に終わらせた。
夕方、イルダは遅れた分の餌代を荷主へ請求した。荷主は渋い顔をしつつ印を押す。青糸は細いのに、国境の両側の暮らしをしっかり縛っていた。シオンは自分が名乗りを上げるなら、その糸を引きちぎる力が必要になると考えた。




