四人の別々の昼
共同工房で働く四人の昼休みは揃わなくなった。サナは港の帆を直しに出かけ、ヴェグは靴底を納め、ケルは帳簿を抱えて町会へ走る。シオンだけが作業台に残り、ずれた蝶番を削っていた。彼が守りたかった工房は、彼が居なくても仕事を回せるようになっている。
昼過ぎ、サナが怒った顔で帰ってきた。荷を止められた商人が、工房の四人をロマスの敵方だと呼んで注文を取り消したという。「あなたの手紙と私の針仕事を一緒にしないで」。シオンは自分の名で受けた仕事の賠償を申し出た。サナは金の話をしているのではない、と首を振った。
午後の窓からは、水路を下る筏が見えた。木材を引く男が縄を締め直す間、ヴェグは窓枠のひびを塞いだ。仕事の不調を口論で変えることはできない。そこへケルが新しい注文書を置くと、四人とも自然に手を伸ばした。その一瞬だけ、誰かが店を去るかもしれないという重さが薄れた。
工房の契約書には、四人のうち一人が公的な罰を受けた場合の規定がない。ケルは抜け目なく条項を書き足そうとしたが、ヴェグは何でも紙にすれば仲間になるのかと怒った。話はまとまらず、針の音だけが午後の部屋に戻った。
夕方、隣の水車小屋から女主人が来て、裂けた粉袋を修理してほしいと言った。客は揉め事を知らず、納期と代金を確かめて帰る。シオンは注文を一人で引き受けかけ、サナに確認した。彼女は品物を見て、自分が縫うと短く答えた。
晩になっても契約書の余白は白いままだった。ヴェグは道具を拭き、ケルは小さな灯を消す。シオンは皆が眠るまで残って机の傷を埋めた。許しを買うつもりはない。だが黒衣の者が部屋にいるだけで誰かの仕事が減るなら、ここへ残る意味を考え直す必要があった。




