出頭日の雨
出頭命令の二枚目には、雨に濡れても消えにくい青い印が押してあった。シオンが役所の待合へ入ると、床には靴底の泥が幾筋も伸びていた。彼の前には井戸の境界を争う農夫が二人、その隣には年季奉公の契約を終えた女が座っている。黒い外套を見て顔を上げた者はなかった。
法務書記のエダは脅迫状を机に広げ、一行ずつ読んだ。シオンは署名を認めたが、ロマスが荷止めを命じるとは知らなかったと答える。「知らなかったことと、考えなかったことは別です」。エダは声を荒らげない。彼は反論のために口を開き、下宿の家賃を思い出して閉じた。
待合の奥では、片脚を引く老職人が帳面を膝に載せていた。揉めているのは息子へ譲る道具の所有権らしい。エダは合間に職人へ水を差し出し、次の呼び出し時間を告げた。ここで扱われる重さは一様ではないが、誰の訴えにも同じ扉が開いている。シオンは自分の名を呼ばれるまで、古い床板の傷を数えた。
証人として呼ばれた会計係は、封筒を受け取った夜、同僚に家族を連れて宿へ移るよう頼んだと話した。火をつけられると思ったという。シオンは火事を起こしていない。それでも相手の恐れを聞いた時、胸の奥にひどく小さな喜びが湧いた。自分の言葉にはようやく重さが生まれていた。
その感情を顔に出さないまま、彼は調書へ署名した。帰る途中、宿屋の主人が夜警用の油を買いに走る姿を見た。警戒が続く限り、何の罪もない店まで余計な出費を負う。数えれば、自分の望む恐怖にも値段がある。
雨は夕方には上がった。町会の掲示板には荷止めに伴う損害申告の期限が新しく書かれ、読み書きのできない者にネラの同僚が内容を伝えていた。シオンは傘を畳み、まだ誰にも呼ばれない黒花の名を胸に、板の前を通り過ぎた。




