花が開かぬ港
ロマスの商会は営業許可を一部停止され、違法な徴収と賃金の未払いを巡る審理を待つことになった。商会が抱えていた倉庫の枠は町会の管理へ戻り、港務官が臨時の人員を募った。賃金は少し上がったが、混乱のため春の出荷は遅れた。
シオンには脅迫状についての出頭命令が届いた。彼は指定された日に役所へ行き、黒い封筒を書いたことを認めた。ロマスが不正をしたからといって、自分の脅迫が正当になるわけではない。法務書記は事実を淡々と記録し、処分の判断を後日に回した。
共同工房ではサナたちが帳簿を見直し、今月の家賃を払えると確認した。シオンがロマスへ近づいていたことを知ると、サナは怒った。「私たちの仕事まで賭けたの」。彼は謝罪したが、許されなかった。四人は今後、私的な争いを工房へ持ち込まないと契約へ書き足した。
港務官は新しい仲介業者へ、帳簿の公開と苦情窓口の設置を条件にした。元の商会で働いていた人々の再雇用も相談され、すぐに全員の行先が決まるわけではなかった。川は何も知らぬように増水し、橋の下を濁った水が流れていた。
その夜、シオンは河港の外れで七枚花弁の札を一枚燃やした。印を焼いたところで、恐喝された家の損失も、失われた仕事も戻らない。消えるのは手の中の木片だけだ。川風に灰が流れ、黒い外套の裾が揺れた。彼は相手を完全に屈服させられなかったことを悔しく思い、その悔しさが自分のためのものであると理解した。
遠くの港灯には、リスベルの術灯が試験的に二つ取り付けられていた。夜の船を導くための小さな光だ。シオンは自分の五枚花弁の版を取り出し、今度は焼かなかった。まだ誇れる悪にはなっていない。それでも、誰かが自分を止めるに足る存在となるまで、この町の外にある世界も知るつもりだった。




