公開された名簿
町会は未払いの賃金に関する名簿を公開した。実名を出せない者は符号で記され、請求には期限が設けられた。倉庫の前には多くの人が集まったが、全員が被害者ではなかった。自分の支払った夜間警護代が戻るか確かめに来た商人もいた。
フォルは祖母と並び、過去の勤務日を申告した。帳簿の別名と照合するため、荷を積んだ場所、同僚の顔、休んだ日の天気まで尋ねられた。彼は渡し場での脅迫に加わった事実も隠さなかった。相談員はそれを別件として記録した。
シオンは列から少し離れたところで、請求書を書く手伝いをした。正義のためだと説明する気はない。ロマスが逃れる穴を一つずつ塞ぐ作業は、彼にとって奇妙な満足を伴っていた。ただ、人の不幸を材料にして喜ぶ自分の顔を、誰にも見せたくなかった。
相談員は読み書きのできない人のため、請求内容を一度声に出して確かめた。列の後ろでは子供が飽きて騒ぎ、母親が膝へ抱き上げる。返金が認められるまでにはまだ時間がかかる。シオンが机を手伝う間にも、港からは荷揚げの掛け声が届いた。傷ついた暮らしは、順番を待つだけでは止まってくれない。
午後、港ではロマスの代わりに新しい仲介業者を雇う案がまとまった。候補には過去に同じ規則の不備を利用した商会もいる。悪人一人が退けば良くなるわけではない。ネラは改正案に再発防止の条項を入れ、商人たちへ賛否を尋ねた。
日が暮れる頃、名簿の列が短くなった。祖母はフォルの腕を取り、帰り道の坂をゆっくり登る。シオンは二人へ声を掛けず、机の上のインクをしまった。自分が望んだ粛清がこのような手続きの姿を取ることを、彼は不本意にも思っていた。




