荷止めの日
ロマスの商会は、黒封が届いた翌朝から倉庫の荷を止めた。契約を見直すためと説明したが、商人たちは予定した船へ品を積めない。河港の広場に苦情の列ができ、港務官は緊急の調整会議を開いた。シオンの名はまだ表に出ていない。
シオンは工房の四人へ事情を告げなかった。仕事は続けられるよう手配し、共同の受注を減らさぬよう注意した。それでも港が止まれば帆布の注文も減り、サナたちは理由を知りたがった。シオンは隠している自分を卑怯だと思う一方、告げれば巻き込むことになると恐れた。
会議ではロマスの倉庫枠が問題になった。港務官は利用実態を調査すると述べ、商会の代表は規則に違反していないと主張した。荷を止めた責任はロマス側にあるが、急な制度変更で仕事を失う人足もいる。商人たちは怒鳴る余裕もなく、代わりの荷揚げ場を探した。
港の商人の中には、ロマスへ抗議するより別の港へ荷を送った者がいた。ルーヴェルの宿屋や食堂は客を失い、荷役人は明日の仕事を探した。シオンの脅迫状が原因の一部なら、彼が目指す恐怖はもう帳簿の外へ漏れている。彼は自分の言葉が人へ届いた喜びと、逃げ道のない不快さを同時に覚えた。
シオンは黒い外套を着て議場の外へ立った。誰かが彼を恐れたか、彼には分からない。自分の脅しが原因かもしれない混乱を見ながら、腕の傷を指でなぞった。望んだほど美しくも、見通しよくもない。
夕方、ネラが共同工房へ来た。彼女は港の停滞で困る商人の名を一枚の紙へ書き、机へ置いた。「相手だけを困らせたつもりにならないで」。シオンは紙を折らずに受け取った。ロマスと違う悪を名乗るなら、少なくとも目を逸らすことはできなかった。




