古い昇降機
共同倉庫の裏手にある昇降機が故障した。荷を二階へ上げるための滑車で、古い浮揚符が補助に使われている。魔術を使わず人力でも動くが、その分だけ人足の負担が増える。港務官は修理のため荷の受け入れを一時止めた。
修理職人が滑車を開くと、軸の奥から薄い板が落ちた。七枚花弁の木印が押され、短い数字が並んでいる。シオンは板を見て心臓が早くなるのを感じた。模倣者がここへ出入りした証拠だ。しかし数字は荷の量ではなく、人の名前に対応する符号らしい。
ヨエルは板を保管し、倉庫の給与台帳を調べ始めた。消えた見習いフォルの名が、別名で記されている可能性がある。母親のない青年は身分証の写しを持たず、雇い主が勝手に名を変えることも珍しくない。帳簿だけでは本人か確かめられなかった。
浮揚符の修理では、荷を吊るす縄を全部外す必要があった。人足は重い箱を地面へ降ろし、通路を空けた。作業が遅れた分の給金は港務局から支払われることになり、職人は署名を求められた。シオンは秘密の板を見つけた興奮より、その板のため人が余分に働く勘定の方を恐ろしく思った。
シオンは昇降機の歯車を覗き込み、板を隠した者の手口を考えた。秘密を残すなら、職人が修理でしか開けない場所を選ぶ。自分も同じことを思いついただろう。その一致が恐ろしく、同時に腹立たしかった。
夜、倉庫は修理を終えたが、新たな荷は入れなかった。保管中の品を持つ商人たちが、調査の間の管理費を巡って交渉している。小さな板一枚が港を止めかけていた。シオンはもう、証拠を自分の手元へ持ち帰るつもりはなかった。




